
働く人のストレスについて、興味深い調査結果が発表されました。
アメリカの調査・コンサルティング会社Gallupが公表した「State of the Global Workplace 2026」によると、前日に長時間ストレスを感じたと答えた働く人の割合は、
ベトナムが13%。
日本が39%。
日本は、ベトナムのちょうど3倍です。
世界全体の平均は40%なので、日本は世界平均とほぼ同じ水準。一方、ベトナムは世界平均を27ポイント下回っています。
この数字を見ると、
「日本の職場は、ベトナムより3倍ストレスが多い」
「ベトナムでは、みんな気楽に働いている」
と思うかもしれません。
ただし、今回の調査結果を読む際には注意が必要です。
Gallupが調べたのは、仕事だけを原因とするストレスではありません。
また、ストレスが少ないことと、仕事への熱意が高いことも同じではありません。
今回は、日本とベトナムの数字を比較しながら、
- 39%と13%は何を表しているのか
- 日本の職場がベトナムより3倍悪いといえるのか
- ベトナムでは本当にストレスが少ないのか
- ストレスと仕事への熱意はどのように違うのか
- 生活全体の評価にはどのくらい差があるのか
を整理します。
動画でも解説しています
この記事は、当YouTubeセカンドチャンネル動画をもとにしています。
只今動画公開前です日本とベトナムで働く人のストレスについては、YouTubeでも解説しています。
動画で確認したい方はこちらをご覧ください。
Gallupの「State of the Global Workplace 2026」とは
今回の数字は、Gallupが2026年4月に公表した「State of the Global Workplace 2026」の国別データです。
最新の調査データは2025年1月から12月に収集されました。
ただし、日本39%、ベトナム13%といった国別の数字は、2025年の1年間だけを集計した結果ではありません。
Gallupは国別データについて、2023年、2024年、2025年の調査をまとめた3年間の移動平均を掲載しています。国ごとの回答者数が少ないことによる数値の振れを抑え、比較しやすくするためです。
調査対象は、雇用主の下で何らかの時間働いている15歳以上の人です。
Gallup World Pollは、原則として各国で無作為抽出した回答者を対象に、対面または電話で調査しています。2025年の世界全体の調査では、14万1,444人の被雇用者が含まれています。
日本39%、ベトナム13%

前日に長時間ストレスを感じた働く人の割合は、次のとおりです。
| 国・地域 | ストレスを感じた割合 |
|---|---|
| ベトナム | 13% |
| 日本 | 39% |
| 世界平均 | 40% |
| 東南アジア平均 | 25% |
| 東アジア平均 | 46% |
日本の39%は、世界平均の40%をわずかに下回る水準です。
日本だけが世界的に突出して高いという結果ではありません。東アジア平均の46%と比べると、日本は7ポイント低くなっています。
一方、ベトナムの13%は、東南アジア平均の25%と比べても大幅に低い数字です。
100人の職場に置き換えると、
- ベトナムでは13人
- 日本では39人
が、前日に長い時間ストレスを感じたと答えたイメージです。
両国の差は26ポイントあります。
「仕事でストレスを感じた割合」ではない

ここが今回の調査で、最も誤解しやすい点です。
Gallupが尋ねているのは、
前日に、長い時間ストレスを経験したか
という内容です。
「勤務中にストレスを感じましたか」
「会社が原因でストレスを感じましたか」
という質問ではありません。
対象者は働いている人ですが、ストレスの原因には仕事以外も含まれる可能性があります。
例えば、
- 家族との問題
- お金の不安
- 健康問題
- 通勤や交通渋滞
- 住居の問題
- 将来への不安
- 人間関係
- 育児や介護
などです。
したがって、正確には、
働く人のうち、前日に長時間ストレスを感じた人の割合
と表現する必要があります。
日本39%、ベトナム13%という数字だけを使って、
「日本企業はベトナム企業より3倍悪い」
と断定することはできません。
日本のストレスは近年少し下がっている
日本のストレス割合を過去の推移で見ると、2019年は43%、2020年は44%でした。
その後は、
- 2021年:43%
- 2022年:42%
- 2023年:41%
- 2024年:39%
- 2025年:39%
と、緩やかに低下しています。
現在も約4割と高い水準ですが、少なくともGallupの国別データでは、近年さらに悪化し続けているわけではありません。
一方、ベトナムは2021年に35%、2022年に32%でしたが、2023年は22%、2024年と2025年は13%まで低下しています。
ベトナムの13%は長期間変わらない国民性を示す数字ではなく、近年急速に低下した結果でもあります。
なぜここまで低下したのかは、今回の国別データだけでは明らかにされていません。
なぜ日本ではストレスを感じやすいのか
Gallupの今回の調査だけで、日本の39%の原因を特定することはできません。
それでも、日本で働いた経験がある人なら、思い当たる要素はあるかもしれません。
例えば、
- 時間や期限に厳しい
- ミスを避けることが強く求められる
- 周囲へ迷惑をかけないよう気を使う
- 本音よりも、その場の空気を優先する
- 休みの日も仕事の連絡が気になる
- 業務目的の不明確な会議や資料がある
- 品質を高めるため、細部まで確認する
- 人手が不足していても業務量が減らない
- 長時間の通勤が必要
といった点です。
日本の仕事には、正確さ、品質、安全性、時間管理などの強みがあります。
ただ、その強みを維持するために、働く人が常に細かな点へ注意を払っている可能性もあります。
遅れない。
間違えない。
相手へ迷惑をかけない。
期待された水準を下回らない。
こうした緊張が毎日続けば、精神的な負担につながることは考えられます。
ただし、これは日本とベトナムの差を説明する一つの見方であり、Gallupが今回の調査で原因として証明したものではありません。
ベトナムでは本当に気楽に働けるのか
ベトナムのストレス割合が13%だからといって、ベトナムの労働環境に問題がないという意味ではありません。
ベトナムにも、
- 長時間労働
- 厳しい上司
- 職場の人間関係
- 低賃金への不満
- 雇用の不安定さ
- 通勤時の交通渋滞
- 住宅費や生活費の上昇
- 昇進や転職への競争
はあります。
また、ストレスの感じ方や、調査でストレスがあったと回答する基準は、文化や言語によって異なる可能性もあります。
ベトナムの13%から確実にいえるのは、Gallupの質問に対して、前日に長時間ストレスを感じたと回答した働く人が少なかったということです。
「ベトナム人は日本人より気楽な性格だから」
「ベトナムの会社はすべて働きやすいから」
と単純化することはできません。
「仕事を見つけるには良い時期」と考える人はベトナム78%
Gallupは、働く人へ、
自分が住む地域では、現在、仕事を見つけるのに良い時期だと思うか
という質問もしています。
「良い時期」と答えた人の割合は、
- ベトナム:78%
- 日本:57%
- 世界平均:52%
でした。
ベトナムでは、約8割の働く人が、住んでいる地域の雇用市場を前向きに評価しています。
日本の57%も世界平均より高く、決して極端に低い数字ではありません。
ただ、ベトナムとの差は21ポイントあります。
今の職場が合わなくても、別の仕事を見つけられると思えることは、心理的な逃げ道になる可能性があります。
「ここを辞めたら次がない」
と思う状態と、
「別の仕事へ移れるかもしれない」
と思える状態では、同じ職場環境でも感じる負担が違うかもしれません。
ただし、仕事を見つけやすいという認識が、ストレス13%の直接的な原因だと証明されたわけではありません。
両者を結び付ける場合は、あくまで可能性のある解釈として扱う必要があります。
ストレスが少なくても仕事への熱意は高くない
今回の結果で特に興味深いのが、従業員エンゲージメントです。
仕事へ積極的に関与し、職場やチーム、仕事に心理的なつながりを持っている「エンゲージしている」人の割合は、
- ベトナム:9%
- 日本:8%
- 世界平均:20%
でした。
ベトナムと日本の差は、わずか1ポイントです。
Gallupのエンゲージメントは、単に、
「仕事が好きですか」
「やる気がありますか」
と聞いた数字ではありません。
仕事、チーム、勤務先への心理的な結び付きや、仕事へ積極的に関与できているかを複数の項目から測定したものです。
ベトナムでは、強いストレスを感じた人は少ないものの、仕事へ強く関与している人も9%にとどまりました。
つまり、
ストレスが少ないことと、仕事へ夢中になれることは別
だと分かります。
日本は「高ストレス・低エンゲージメント」
日本は、ストレス39%に対して、エンゲージメントは8%です。
ベトナムは、ストレス13%、エンゲージメント9%でした。
整理すると、
日本
- ストレスを長時間感じた人が多い
- 仕事へ積極的に関与している人は少ない
ベトナム
- ストレスを長時間感じた人は少ない
- 仕事へ積極的に関与している人は日本と同様に少ない
という違いがあります。
日本にとって深刻なのは、単にストレスが高いことだけではないかもしれません。
忙しく、疲れている。
しかし、仕事への強い結び付きや熱意も感じにくい。
この組み合わせが続けば、働く人は消耗しやすくなります。
必要なのは、社員へさらに努力を求めることではなく、負担を減らしながら、仕事の目的や意味を分かりやすくすることではないでしょうか。
生活全体が良い状態にある人はベトナム59%、日本31%
Gallupは、働く人の生活全体についても評価しています。
現在の生活と将来の生活を0から10までの段階で回答してもらい、
- 現在の生活を7以上
- 5年後の生活を8以上
と評価した人を「thriving」と分類しています。日本語では「順調」「良好な状態」「繁栄している」などと訳されます。
この「生活全体が良好な状態にある」と分類された人の割合は、
- ベトナム:59%
- 日本:31%
- 世界平均:34%
でした。
ベトナムは日本を28ポイント上回っています。
ベトナムの59%は東南アジア平均の36%よりも高く、日本の31%は東アジア平均の32%とほぼ同じです。
生活評価の差は「現在」だけではない
Gallupの「thriving」は、現在の生活だけを評価する指標ではありません。
現在に加えて、5年後の生活をどのように予想しているかも含まれます。
そのため、ベトナムの59%という数字には、
- 現在の生活への満足
- これから生活が良くなるという期待
- 将来への楽観
が反映されている可能性があります。
ベトナムでは2020年に26%だった「thriving」の割合が、2023年に51%、2024年に56%、2025年に59%まで上昇しています。
一方、日本も2020年の25%から、2025年には31%へ上昇していますが、ベトナムほど急速には伸びていません。
この結果からは、ベトナムの働く人が現在だけでなく、将来の生活についても比較的前向きに評価していることがうかがえます。
仕事への熱意が低くても生活には満足できる
ベトナムでは、エンゲージメントが9%である一方、「thriving」は59%です。
仕事へ強い熱意を持つ人は少なくても、生活全体を良好だと評価する人は多いという結果です。
これは、
仕事の満足度と人生全体の満足度は同じではない
ことを示しています。
仕事が人生の中心でなくても、
- 家族との時間
- 友人との交流
- 食事
- 趣味
- 休日
- 将来への期待
- 地域とのつながり
などによって、生活全体を前向きに評価することはできます。
もちろん、今回の数字だけで、ベトナム人が仕事と私生活を明確に分けていると断定することはできません。
ただ、仕事への熱意が低いからといって、生活全体も不満であるとは限らないことは分かります。
日本の職場がベトナムより3倍悪いわけではない
日本39%、ベトナム13%という数字は大きな差です。
しかし、これは職場の良し悪しを直接比較したランキングではありません。
日本の働き方には、
- 給与や雇用が比較的安定している
- 社会保険制度が整っている
- 安全基準が高い
- 教育や研修制度がある
- 製品やサービスの品質が高い
- 時間や約束が守られやすい
といった強みがあります。
一方、ベトナムにも、
- 経済成長への期待
- 雇用市場への前向きな認識
- 生活全体への高い評価
- 若い人口構成
- 新しい仕事や産業への期待
など、日本とは異なる強みがあると考えられます。
どちらが完全に良い、悪いという話ではありません。
ただし、日本の働く人の約4割が、前日に長時間ストレスを感じているという結果は、仕事や生活の負担を見直すきっかけにはなります。
日本の職場が見直せること
ストレスを減らすために、すべての会社が大規模な制度改革を行う必要はないかもしれません。
例えば、
- 目的の不明確な会議を減らす
- 不要な報告書や資料を見直す
- 休暇中の社員へ連絡しない
- 失敗した人を必要以上に責めない
- 業務の優先順位を明確にする
- 良い仕事を具体的に評価する
- 意見を言いやすい環境を作る
- 転職や退職を裏切りと考えない
- 管理職の負担を減らす
- 人手不足を個人の努力だけで補わせない
といった改善があります。
一生懸命働くことと、常に苦しみながら働くことは同じではありません。
仕事の品質を保ちながら、必要のない負担を減らすことは可能です。
仕事を人生のすべてにしない
今回の調査から考えたいのは、どちらの国が勝っているかではありません。
仕事が順調でなかった日でも、人生全体が失敗したわけではありません。
会社の外には、
- 家族
- 友人
- 趣味
- 旅行
- 食事
- 地域
- 自分だけの時間
があります。
日本では、一生懸命働くことが肯定的に評価されます。
その文化は、日本のサービスや製品の品質を支えてきました。
一方で、仕事が生活の中心になりすぎると、休日も疲労回復だけで終わり、月曜日のことを考えて不安になる状態が続きます。
仕事のために生活するのではなく、生活を成り立たせるために仕事をする。
この視点を持つことも必要なのかもしれません。
調査結果を読む際の注意点
今回の国別比較には、いくつかの注意点があります。
原因を証明した調査ではない
日本でストレスが高い理由や、ベトナムで低い理由を直接調査したものではありません。
仕事だけのストレスではない
家庭、健康、お金、交通、人間関係なども含まれる可能性があります。
国別データは3年間の移動平均
2025年単年の数字ではなく、2023年から2025年の調査を集計しています。
文化によって回答傾向が異なる可能性がある
「長い時間ストレスを感じた」という言葉の受け止め方や、感情を回答する基準が国によって完全に同じとは限りません。
エンゲージメントは単純な「やる気」ではない
仕事、チーム、勤務先への心理的な関与を複数の質問で測定した指標です。
数字を比較することは有益ですが、一つの数字だけで国民性や職場環境を断定しないことが重要です。
まとめ:日本は高ストレスだが、単純な職場比較ではない
今回は、Gallupの「State of the Global Workplace 2026」に掲載された、日本とベトナムの働く人に関するデータを紹介しました。
前日に長時間ストレスを感じた人の割合は、
ベトナム13%。
日本39%。
世界平均40%。
でした。
日本はベトナムの3倍ですが、この数字は仕事だけを原因とするストレスではありません。
また、日本企業がベトナム企業より3倍悪いという意味でもありません。
仕事を見つけるのに良い時期だと答えた人は、ベトナム78%、日本57%。
仕事へ積極的に関与している人は、ベトナム9%、日本8%。
生活全体が良好な状態にある人は、ベトナム59%、日本31%でした。
ベトナムでは、ストレスを強く感じた人が少なく、生活全体を前向きに評価する人も多い一方、仕事へのエンゲージメントは日本と同じく低い結果です。
日本では、ストレスが高い一方で、仕事へのエンゲージメントと生活全体の評価も低くなっています。
重要なのは、働く人へさらに努力を求めることではありません。
必要のない仕事を減らす。
仕事の目的を明確にする。
良い仕事を認める。
休むときは休めるようにする。
仕事以外の生活も大切にする。
こうした基本的なことを実現できる職場を増やす必要があるのではないでしょうか。
皆さんは、日本とベトナムの働き方について、どのように感じますか?
日本の職場はストレスが多いと思うのか。
それとも、正確さや安定性など、日本の働き方にも良い部分が多いと思うのか。
ぜひコメントで教えてください。
参考情報
出典:Gallup「State of the Global Workplace 2026」
出典:Gallup「State of the Global Workplace: Japan Country-Level Data」
出典:Gallup「State of the Global Workplace: Vietnam Country-Level Data」
出典:Gallup「2026 Global Data Summary」
出典:Gallup「Global Indicator: Employee Wellbeing」
この記事は、当YouTubeセカンドチャンネル動画をもとにしています。
只今動画公開前です


