
ベトナム旅行中、繁華街のバーやナイトスポットで大きな風船を吸っている人を見たことがある人もいるのではないでしょうか。
この風船の中に入っていることがあるのが、いわゆる笑気ガス「N₂O(亜酸化窒素)」です。
ベトナム国会は2026年8月24日、娯楽目的で人に吸わせるN₂Oの事業を禁止する投資法改正を可決しました。
新しい禁止規定は2027年1月1日から施行されます。
医療、食品技術、検査、科学研究などの正当な用途は引き続き認められますが、バーやクラブなどで客に吸わせて楽しませる、いわゆる「笑気ガス風船」の娯楽販売は明確に規制される方向です。
旅行者としては、繁華街で勧められても購入・使用しないのが最も安全です。
動画でも解説しています
この記事は、当YouTubeセカンドチャンネル動画をもとにしています。
ベトナムで規制が強化される笑気ガスについて、2027年から何が禁止されるのか、旅行者が注意したいポイントや健康リスクを動画でも紹介しています。
記事とあわせて確認してみてください。
ベトナム国会が笑気ガス規制を強化

2026年8月24日、ベトナム国会は投資法の一部を改正する法律を可決しました。
その中で新たに禁止対象となったのが、
人が吸引するためのN₂Oを娯楽目的で事業として提供する行為
です。
N₂Oは亜酸化窒素、英語ではNitrous Oxideと呼ばれるガスで、吸引すると一時的な浮遊感や多幸感などを感じることがあるため、「laughing gas」「笑気ガス」とも呼ばれています。
2027年1月1日から禁止規定が施行
今回の投資法改正全体は2027年3月1日に施行される部分もあります。
しかし、N₂Oの禁止規定についてはそれより早く、
2027年1月1日
から施行されることが決まっています。
さらに、娯楽目的のN₂O事業に関してすでに締結されている契約についても、2027年1月1日から効力を失い、一定期間内に清算する仕組みが設けられています。
「そのうち規制されるかもしれない」という段階ではなく、国会で可決され、施行日まで決まった状態です。
何が禁止されるの?
法律上のポイントは、N₂Oという化学物質そのものを全面禁止するわけではないことです。
禁止されるのは、原則として人が吸引して楽しむ目的でN₂Oを事業として扱うことです。
禁止対象
人が吸引して楽しむことを目的としたN₂Oの販売・事業。
例外
医療、食品技術、検査、科学研究など正当な目的での使用。
例えば医療現場で麻酔・鎮静などに使用するN₂Oまで禁止されるわけではありません。
食品分野などでもN₂Oは正規の用途があります。
旅行者が見る「風船」が問題になる
旅行者にとって特に関係するのは、ナイトスポットなどで販売されている風船です。
ベトナムでは以前から、バー、クラブ、カラオケ店などでN₂Oを充填した風船が販売されるケースがありました。
利用者は風船からガスを吸い込み、一時的な酩酊感や浮遊感を楽しみます。
見た目だけを見ると、お酒の延長のような軽い遊びに感じるかもしれません。
しかし、ベトナム政府は以前からこうした娯楽目的のN₂O乱用を問題視してきました。
ホーチミンのブイビエン通りでも見かけることがある
ホーチミン市で旅行者が目にする可能性がある場所の一つが、1区のブイビエン通り周辺です。
バックパッカー街として有名で、バーやクラブ、レストランなどが深夜まで営業するエリアです。
これまで繁華街では、風船を持っている人や、店内・路上でガスを吸っている人を見かけることもありました。
ただし、
「普通に売っているから合法」「みんな使っているから問題ない」と判断するのは危険です。
実は2027年を待たず取り締まりは強化されている
今回の法律は2027年1月1日施行ですが、だからといって2026年中なら自由に販売できるという意味ではありません。
N₂Oは以前から化学物質として管理されており、許可や流通目的などについて規制があります。
実際に2026年にも、ベトナム警察は違法なN₂O販売を相次いで摘発しています。
ホーチミン市では5人を刑事立件
2026年5月、ホーチミン市警察は大規模にN₂Oを違法販売していたとして、5人を刑事立件し、身柄を拘束したと発表しました。
警察は「禁止品の販売」に関する刑事事件として捜査しています。
ハノイでも大規模販売網を摘発
さらに2026年8月には、ハノイ警察が大規模なN₂O販売網を摘発し、9人を刑事立件したと発表しました。
別のラウンジでも、2026年3月の摘発をきっかけに26人が刑事立件されています。
ベトナム当局はすでに笑気ガスの違法流通をかなり厳しく取り締まっています。
「吸っただけで必ず逮捕」ではない
ここは誤解しないように整理しておきましょう。
今回成立した投資法改正は、主にN₂Oを娯楽目的の吸引用として事業・販売することを禁止するものです。
そのため、この法律だけを根拠として、
「旅行者が風船を1回吸っただけで必ず逮捕される」
と断定することはできません。
一方、販売元が違法営業だったり、警察の摘発現場に居合わせたり、別の違法行為が関係したりすれば、事情確認などに巻き込まれる可能性はあります。
外国人旅行者としては、細かい法律論を現場で判断する必要はありません。
勧められても買わない。
吸わない。
違法と思われる販売に関わらない。
これが一番確実です。
笑気ガスはなぜ危険なの?

笑気ガスは医療にも利用されているため、「病院でも使うなら安全なのでは」と思う人もいるかもしれません。
しかし、医療現場では医師などの管理のもと、濃度や使用量、患者の状態を確認しながら使用します。
繁華街で風船から自己判断で吸う状況とはまったく違います。
繰り返し吸うと神経障害の危険
ベトナム保健省は、N₂Oの長期・反復使用による健康被害について警告しています。
特に重要なのがビタミンB12への影響です。
N₂Oを継続的に乱用すると、体内でビタミンB12の働きが阻害され、神経系に深刻な問題を起こす可能性があります。
- 手足のしびれ
- 手足の力が入りにくくなる
- 歩行障害
- 感覚障害
- 記憶力や集中力への影響
- 睡眠障害
- 重度の神経障害
などにつながるケースがあります。
ベトナム国内でも、N₂O乱用後に手足のしびれや歩行困難を起こし、病院で治療を受けた患者が報告されています。
一時的な酸素不足や事故にも注意
神経障害だけではありません。
N₂Oを吸引すると意識状態が変化し、
- めまい
- ふらつき
- 判断力の低下
- 転倒
- 意識を失う
などの危険もあります。
特にバーやクラブではアルコールを飲んでいるケースも多いため、正常な判断ができなくなるリスクも考えなければなりません。
旅行先の繁華街で意識がもうろうとすること自体が、防犯面でも大きなリスクになります。
酔った状態で寝込むのも旅行者には危険
海外旅行では、自分の身体だけでなく所持品を守る必要もあります。
スマートフォン、財布、パスポートなどを持っている状態で判断力が低下したり、その場で寝込んだりすれば、盗難など別のトラブルに遭う可能性も高くなります。
笑気ガスそのものの健康リスクだけでなく、使用後の状況による二次的な危険まで考える必要があります。
「医療で使うもの」と「繁華街で吸うもの」は別と考える
N₂Oは、医療分野で麻酔・鎮静・疼痛管理などに利用されることがあります。
食品分野でも正規用途があります。
だからといって、繁華街で自己判断で吸って安全という意味ではありません。
医療現場では、専門家が患者の状態や濃度、使用方法を管理しています。
合法的な医療利用と、娯楽目的の乱用は完全に分けて考える必要があります。
旅行者が気をつけたい5つのポイント
- 繁華街で風船を勧められても購入しない
- 「合法だから大丈夫」という店員の説明だけを信用しない
- 中身の分からないガス・飲み物・薬物には手を出さない
- 警察の摘発が行われている店には近づかない
- 体調に異常を感じた場合はすぐ医療機関へ相談する
特に海外では「知らなかった」で済まないケースもあります。
旅行先で普段見慣れないものを勧められた場合は、一度断って確認するくらい慎重な方が安全です。
【追加情報】2026年にも大規模摘発が相次ぐ
今回の法改正とは別に、ベトナム当局はすでに笑気ガスの違法販売への取り締まりを強化しています。
2026年5月にはホーチミン市で、N₂Oを大規模に違法販売していたとして5人が刑事立件されました。
さらに8月28日には、ベトナム公安省が、ハノイ警察によって大規模なN₂O販売ネットワークが摘発され、9人が「禁止品の販売」の疑いで刑事立件されたことを発表しています。
つまり、
2027年から初めて取り締まりが始まるわけではありません。
現在でも違法なN₂O流通・販売について刑事捜査や摘発が行われています。
2027年1月1日からは投資法上も娯楽目的のN₂O事業が明確な禁止対象となり、さらに規制が強化される形です。
まとめ:繁華街で勧められても笑気ガスには手を出さない
ベトナム国会は2026年8月24日、投資法改正を可決し、人が吸って楽しむ目的のN₂O事業を禁止することを決めました。
禁止規定は2027年1月1日から施行されます。
今回のポイント
娯楽目的で人に吸わせるN₂Oの販売・事業を禁止。
2027年1月1日から施行。
医療・食品技術・検査・科学研究などは例外。
2026年現在も違法販売の摘発は行われている。
乱用すると神経障害など重大な健康被害の危険がある。
笑気ガスは風船という見た目から軽い遊びに感じるかもしれません。
しかし健康上のリスクがあり、ベトナムでは法規制もさらに強化されています。
ブイビエン通りなどで見かけても、「旅行中だから一度くらい」と安易に手を出さないことをおすすめします。
参考情報
- ベトナム国会「投資法の一部改正」2026年8月24日
- ベトナム政府電子新聞「国会、投資法改正を可決」
- ベトナム公安省「N₂O大規模違法販売事件」
- ベトナム保健省「Nitrous Oxide(N₂O)の健康リスク」
- ベトナム商工省「N₂Oなど管理対象化学物質の規制」
この記事は、当YouTubeセカンドチャンネル動画をもとにしています。




