
バンコクの街を長年走り続けてきた、クリーム色と赤色の昔ながらの路線バスが大きな転換期を迎えます。
バンコク大量輸送公社(BMTA)は、ノンエアコンの「赤バス」1,520台を順次退役させ、エアコン付きのEVバス1,520台へ置き換える計画を進めています。
新しいEVバスは、2027年3月末から5月末にかけて3回に分けて納入される予定です。
冷房付きになるだけでなく、クレジットカード・デビットカードのタッチ決済やQRコード決済などにも対応する方向で、旅行者にとっても利用しやすいバスへ変わります。
一方で、現在8バーツで利用できる昔ながらのノンエアコンバスについては、EV化に伴って運賃が上がる可能性があります。
便利で快適になる一方、「バンコクらしい風景」の一つだった赤バスは、いよいよ見納めが近づいています。
動画でも解説しています
この記事は、当YouTubeセカンドチャンネル動画をもとにしています。
バンコク名物の赤バスがEVバスへ置き換えられる今回のニュースについて、導入時期や運賃、旅行者にとって何が変わるのかを動画でも紹介しています。
記事とあわせて確認してみてください。
バンコクの赤バス1,520台がEVへ

今回置き換えの対象となるのは、BMTAが運行している昔ながらのクリーム色と赤色のノンエアコンバスです。
タイでは「รถร้อน(ロット・ローン/暑いバス)」などとも呼ばれるタイプで、文字通り冷房がありません。
窓を開けた状態でバンコクの街を走る姿は、長年にわたって市民の日常の足であり、外国人旅行者にとっても印象的な光景でした。
しかし車両の老朽化が進み、環境負荷や維持費も大きくなっていることから、BMTAは1,520台を新しい電気バスへ置き換えます。
現在
クリーム色+赤色のノンエアコンバス 1,520台
↓
今後
エアコン付きEVバス 1,520台へ順次置き換え
2027年3月から5月にかけて順次納入
新しいEVバス1,520台は、一度にすべて導入されるわけではありません。
現在の納入予定は次の通りです。
- 2027年3月末まで:500台
- 2027年4月末まで:500台
- 2027年5月末まで:520台
合計1,520台です。
最初の500台については、納入後すぐに全車が営業運転へ入るわけではなく、約2週間かけて走行試験、安全設備の確認、運転手の訓練などを行ったうえで順次営業に投入する計画です。
そのため「2027年3月1日から赤バスが一斉になくなる」という意味ではありません。
最初は約50路線へ投入予定
最初に受け取るEVバスは、BMTAが運行する路線のうち約50路線を中心に投入する計画です。
報道では、ラチャダーピセーク-ラムカムヘン方面を走る191番をはじめ、
- シーロム
- バーンラック
- クロントゥーイ
- ラマ4世通り周辺
- 郊外からバンコク中心部へ向かう路線
などへの投入が想定されています。
実際の運行開始日や対象路線については、今後BMTAからさらに具体的な発表が出るとみられます。
現在の赤バスは8バーツ
赤バスが長年利用されてきた大きな理由の一つが、運賃の安さです。
現在、BMTAの一般的なクリーム色・赤色のノンエアコンバスは、通常8バーツという非常に低価格で利用できます。
日本円にすると数十円程度で、バンコク市内を移動できる公共交通機関としては非常に安価です。
旅行者の場合、BTSやMRT、タクシー、Grabなどを中心に利用していると、バンコクの路線バスに乗る機会は少ないかもしれません。
しかしローカルなバンコクを体験したい旅行者にとって、赤バスは独特の乗り物でもあります。
EVバスは15・20・25バーツ案も

一方、新しいEVバスになると、運賃体系も変わる可能性があります。
2026年9月時点では、エアコン付きバスとして距離に応じて、
15バーツ
20バーツ
25バーツ
程度とする案が報じられています。
つまり最も安い区間でも、現在の8バーツより上がる可能性があります。
毎日バスを利用するバンコク市民にとっては、車両が快適になる一方で、交通費の負担増につながりかねないため議論になっています。
ただし、15・20・25バーツという数字を「最終決定した新運賃」と断定するのはまだ早く、正式な料金体系は今後の発表を確認する必要があります。
以前には「20バーツ定額案」もあった
BMTAのEV化をめぐっては、これまでにも複数の運賃案が検討されてきました。
過去の事業計画には、1回20バーツ、1日最大40バーツとする定額型の考え方も示されています。
その後、現在はエアコンバスの既存料金体系に近い15~25バーツ程度の案が報じられています。
政府は共通運賃制度や福祉カードなどを利用して、利用者の負担を軽減する方法も検討しています。
つまり料金については、車両の導入よりもまだ流動的な部分が残っています。
クレジットカードやQR決済にも対応へ
旅行者にとって大きなメリットになりそうなのが、運賃の支払い方法です。
新しいEVバスでは、公共交通の共通決済システムとの連携を想定しており、
- EMV対応クレジットカード
- EMV対応デビットカード
- QRコード決済
- タイの福祉カード
などに対応する方向です。
現在の昔ながらのバスでは、車掌が料金を回収する方式もバンコクらしい光景の一つです。
現金を用意しなくても乗車できる仕組みが本格化すれば、外国人旅行者にとって路線バスを利用するハードルはかなり下がります。
なぜ今、赤バスをEVにするの?
最大の理由の一つは、既存車両の老朽化です。
タイ政府は今回のEV導入について、現在使われている古いバスの中には20~30年以上使用されている車両があると説明しています。
古いディーゼル車は、
- 燃料費がかかる
- 修理・維持費が高くなる
- 排気ガスを出す
- PM2.5など大気汚染対策の面で不利
- 冷房がなく利用者の快適性が低い
といった問題があります。
EV化によって、燃料費や整備費の削減と、大気汚染対策を同時に進める狙いがあります。
BMTAは年間約41億バーツのコスト削減を見込む
今回のEVバス導入は、環境対策だけが目的ではありません。
BMTAは、車両の維持管理や燃料などを含めた運営コストについて、年間で約41億バーツの削減効果を見込んでいます。
今回の1,520台は購入ではなく、民間企業から7年間リースする仕組みです。
2026年1月29日にBMTAとナコンチャイエアー社が契約を締結しています。
契約額は約149億バーツ規模です。
赤バスは本当に全部なくなる?
今回の計画については、「バンコクから赤いバスが全部消える」と表現すると少し注意が必要です。
今回明確に置き換え対象となっているのは、
BMTAが運行するクリーム色・赤色のノンエアコンバス1,520台
です。
新しいEVバスを1対1で投入しながら、既存のノンエアコン車を順次退役させる計画になっています。
したがって、バンコク名物として知られてきたBMTAの昔ながらの赤バスについては、事実上「引退へ向かう」と考えていいでしょう。
ただし、新車1,520台の納入が5月に完了した瞬間、すべての旧型車が同時に消えるとまでは現時点で断定できません。
今なら昔ながらの赤バスにまだ乗れる
2026年9月時点では、赤バスはまだバンコクの街を走っています。
窓が開いた車内、レトロな座席、古い車体、車掌との料金のやり取りなど、新しいEVバスでは味わえなくなる可能性が高い体験です。
旅行中に見かけた場合、時間に余裕があれば一度乗ってみるのもバンコクらしい体験になるかもしれません。
ただし路線バスは渋滞の影響を受けやすく、到着時刻が読みにくいことがあります。
空港移動や予約時間が決まっている予定など、遅刻できない場面では余裕を持って利用しましょう。
旅行者にはEV化のメリットも大きい
昔ながらの赤バスがなくなることを寂しく感じる人もいるでしょう。
一方で、旅行者の立場では新しいEVバスのメリットも少なくありません。
- エアコン付きで暑さを避けられる
- 排気ガスがなくなる
- 新しい車両で乗り降りしやすくなる
- カードのタッチ決済が利用しやすくなる
- QR決済などキャッシュレス化が進む
特にバンコクは年間を通して気温が高いため、冷房付きになるだけでも利用者の快適性は大きく変わります。
【追加情報】中国Fotonが撤退、CRRCが全1,520台分を供給へ
今回のEVバス計画について、その後、車両供給体制に変更がありました。
当初の計画では、中国メーカー2社の車両部品を使用し、
- Foton:1,000台分
- CRRC:520台分
という構成が予定されていました。
しかし、その後Fotonがプロジェクトから撤退。
現在はCRRCが1,520台分すべての主要部品を供給する方向へ変更されています。
2026年8月30日には、最初の40台分の主要部品がタイへ到着し、国内工場での組み立て準備が進められています。
すでに試作車も製作されており、安全性や道路との適合性などの試験を実施しています。
メーカー構成は変わりましたが、BMTAは2027年3月から5月にかけて1,520台を納入する現在のスケジュールを維持しています。
9月24日にはEVバス試作車を公開予定
BMTAは2026年9月24日に創立50周年を迎えます。
そのタイミングで、製造・検査を終えたEVバスの試作車1台を公開し、運転手による試乗などを行う予定です。
量産車が実際にどのようなデザイン・車内設備になるのかも、今後より具体的に見えてくるでしょう。
まとめ:便利になる一方、バンコクの風景が一つ変わる
BMTAは、長年バンコクを走ってきたクリーム色・赤色のノンエアコンバス1,520台を、同数のエアコン付きEVバスへ置き換えます。
今回のポイント
赤バス1,520台をEVバス1,520台へ順次置き換え。
2027年3月末に500台、4月末に500台、5月末に520台を納入予定。
最初は約50路線を中心に投入予定。
現在のノンエアコンバスは8バーツ。
EVでは15・20・25バーツ程度の運賃案があるが、最終確定には注意。
EMVカードやQRコードなどキャッシュレス決済にも対応する方向。
旅行者にとっては、冷房やキャッシュレス決済によってバンコクのバスがかなり利用しやすくなる可能性があります。
一方、窓を全開にして街を走る昔ながらの赤バスは、バンコクの日常風景を象徴する存在でもありました。
「一度くらい赤バスに乗ってみたい」という人は、2027年の本格的なEV化が始まる前に体験しておくのもいいかもしれません。
参考情報
- タイ政府広報局「BMTA EV Bus 1,520台導入計画」
- Thai PBS「ปิดตำนานรถเมล์ร้อน 8 บาท ขสมก. รอรับมอบรถเมล์ EV คาดเริ่มใช้ มี.ค.70」
- Thansettakij「ขสมก. กางแผนรับรถเมล์ EV 1.5 พันคัน」
- Thairath「ขสมก.เปลี่ยนโฉมรับมอบรถเมล์ EV 1,520 คัน ลุย 50 เส้นทาง」
- タイ内閣・政府広報「EVバス1,520台リース計画」
- Thailand Public Debt Management Office「BMTA事業・運賃計画」
この記事は、当YouTubeセカンドチャンネル動画をもとにしています。




