
2024年末にようやく最初のメトロが開業したホーチミン市が、今度は一気に都市鉄道網を拡大しようとしています。
ホーチミン市は2030年までに都市鉄道ネットワークを約255kmまで拡大する目標を掲げています。
現在営業しているメトロ1号線「ベンタイン-スイティエン」は19.7km。
現在の営業路線と比べれば、最終的なネットワーク規模は10倍を大きく超える計算です。
ただし、2030年までに255kmというのは完成済みの確定スケジュールではなく、市が掲げている非常に野心的な目標です。
路線ごとに、すでに着工したもの、準備中のもの、ルートや事業計画を詰めているものが混在しています。
「2030年には必ず255km完成する」と断定するのではなく、「8つの優先事業を進め、約255kmを目指している」と理解するのが正確です。
動画でも解説しています
この記事は、当YouTubeセカンドチャンネル動画をもとにしています。
ホーチミン市が進める大規模なメトロ拡張計画について、現在の1号線の使い勝手や、2030年までに何が変わる可能性があるのかを動画でも紹介しています。
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2030年までにメトロ網約255kmを目指す

2026年7月から8月にかけて、ホーチミン市は都市鉄道整備計画をさらに加速させました。
市の鉄道網開発運営委員会は、2026~2030年に8つの優先事業を進め、2030年までに都市鉄道の総延長を約255kmまで拡大する目標を示しています。
これは、国の方針として示されていた2030年までの約200kmという目標を、ホーチミン市側がさらに約55km上積みしたものです。
さらに2035年には追加の7路線を進め、都市鉄道網を約532kmまで拡大する方針も示されています。
現在走っているのは1号線19.7km
現在営業しているのは、メトロ1号線「ベンタイン-スイティエン」です。
メトロ1号線
区間:ベンタイン-スイティエン
総延長:19.7km
駅数:14駅
営業開始:2024年12月22日
ベンタイン駅から中心部を地下で走り、その後は高架区間を通って市東部のスイティエン方面へ向かいます。
ホーチミン市で初めて営業開始した本格的な都市鉄道です。
なぜ突然255kmという大規模計画になった?
今回の計画を見るうえで重要なのが、現在の「ホーチミン市」の範囲です。
2025年7月、従来のホーチミン市は、ビンズオン省とバリア=ブンタウ省を統合しました。
現在のホーチミン市は、人口1,400万人超、面積約6,773平方キロという巨大都市になっています。
そのため、今回の255kmは、以前の1区・3区・トゥードゥック市など旧ホーチミン市中心部だけの地下鉄網ではありません。
旧ビンズオン方面などを結ぶ広域的な都市鉄道も含んだ計画になっています。
つまり「中心街に8本の地下鉄を一気に造る」というより、巨大化した新ホーチミン市を鉄道でつなぐ計画です。
2030年までの優先8事業とは?

2026年8月時点で、ホーチミン市が優先的に進めているのは次の8事業です。
- メトロ2号線:ベンタイン-タムルオン
- メトロ2号線:ベンタイン-トゥーティエム
- ベンタイン-カンザー都市鉄道
- トゥーティエム-ロンタイン都市鉄道
- メトロ1号線延伸:ビンズオン新都市-スイティエン
- 旧トゥーダウモット方面-ホーチミン中心部
- メトロ6号線第1期:タンソンニャット空港-フーフー
- メトロ2号線延伸:タムルオン-アンハー-北西都市区
ただし、8路線すべてが同じ進捗ではありません。
工事段階まで進んでいるものもあれば、まだルート承認、事業化調査、用地取得などを進めている段階の路線もあります。
2号線ベンタイン-タムルオンは工事段階へ
現在の拡張計画の中で特に重要なのがメトロ2号線です。
ベンタインから市北西部のタムルオンへ向かう区間は、1号線に続く中心的な路線になります。
市は2030年の運行開始を目指しており、1号線だけだったホーチミン市中心部の鉄道網を本格的な「ネットワーク」に変える役割が期待されています。
タンソンニャット空港への鉄道も計画
旅行者にとって特に気になるのが空港アクセスでしょう。
現在、タンソンニャット国際空港にはメトロが直接乗り入れていません。
そのため空港から中心部へは、タクシー、Grab、バスなどを利用するのが一般的です。
一方、2030年までの優先事業にはメトロ6号線第1期「タンソンニャット空港-フーフー」が含まれています。
空港とメトロ網がつながれば、旅行者にとってホーチミンの交通事情は大きく変わる可能性があります。
ロンタイン空港へも鉄道接続を計画
さらに、今後重要になるのがロンタイン国際空港です。
ホーチミン市中心部から東へ離れたドンナイ省に建設されている巨大空港で、将来的には南部ベトナムの重要な国際航空拠点になります。
中心部側のトゥーティエムとロンタイン空港を結ぶ約44kmの都市鉄道も計画されています。
完成すれば、中心部からロンタイン空港へ鉄道で移動できるルートになる可能性があります。
ロンタイン空港はまだ本格営業前
ロンタイン国際空港については、2026年9月現在、試験運用の段階です。
ベトナム航空当局の計画では、2026年9~11月に各設備の試運転や運用テストを実施し、2026年12月1日から正式運用を開始することを目標としています。
そのため、現時点では「タンソンニャットとロンタインの2空港がすでに通常運用されている」という状態ではありません。
現在の1号線、実際の使い勝手は?
メトロ1号線は新しく、駅や車両も比較的きれいで、中心部から東部へ移動する場合には非常に便利です。
特に、
- ベンタイン
- 市民劇場周辺
- バソン
- タオディエン
- アンフー
- スイティエン
など、駅に近い場所へ行く場合は利用価値があります。
2026年夏には、1日平均6万人を超える利用者がいると報じられており、単なる観光用ではなく市民の日常交通としても定着しつつあります。
旅行者には「駅までどう行くか」が問題
【ここに「メトロとGrab・旅行者の使い分け」画像を挿入】
一方、旅行者にとって現在の最大の弱点はラストワンマイルです。
ホーチミン市は一年を通して気温が高く、駅まで10~15分歩くだけでもかなり暑く感じます。
駅から離れた場所に宿泊している場合、
- ホテルから駅まで歩く
- メトロへ乗る
- 到着駅からさらに目的地へ移動する
という形になります。
短距離なら、最初からGrab BikeやGrab Carで目的地まで行った方が簡単なケースもあります。
現在のホーチミンでは、メトロとGrabのどちらが便利かは目的地によって大きく変わります。
駅近ホテルならメトロの価値は大きい
逆に宿泊先が駅から数分なら、メトロの便利さは一気に高まります。
渋滞の影響をほぼ受けず、料金も安く、到着時間も読みやすいからです。
今後ホーチミン旅行でホテルを選ぶ際には、
- 最寄りのメトロ駅
- 駅までの徒歩時間
- 行きたい観光地との位置関係
まで確認すると、移動がかなり楽になる場合があります。
レタントン日本人街の最寄りはバソン駅
日本人旅行者・在住者に馴染みのあるレタントン周辺では、メトロ1号線のバソン駅が比較的近い駅になります。
ただし、日本人街の中心まで駅から完全に直結しているわけではなく、場所によっては徒歩移動が必要です。
荷物が多いときや暑い時間帯は、Grabの方が快適な場合もあります。
ベンタインから市民劇場は1駅
ベンタイン駅から市民劇場駅までは1駅です。
ただ、このエリアは徒歩でも観光できる範囲のため、旅行者の場合は「メトロへ乗ることそのものを楽しむ」目的で利用することも多いでしょう。
一方、タオディエン、スイティエン、ホーチミン市東部方面へ向かう場合は、1号線のメリットがより大きくなります。
運行時間は「毎日22時まで」ではない
1号線の運行時間も、開業当初から調整されています。
2025年8月に承認された運行体系では、通常、
月~金曜日
5:00~22:00
土・日・祝日
5:00~23:00
という運行が基本になっています。
国慶節や年末年始などには増便や時間延長が行われることもあります。
バンコクや東京などの鉄道と比べれば終電はまだ早めですが、開業当初より利用状況に応じた調整も進んでいます。
17路線のバスもメトロ駅へ接続
ラストワンマイル対策として、ホーチミン市は1号線の駅と周辺地域を結ぶフィーダーバスも整備しています。
メトロ開業に合わせて17の接続バス路線が導入され、その後も駅への接続改善が進められています。
現地の利用者の場合、
自宅 → バイク・バス → メトロ → 徒歩・バス
のように複数の交通手段を組み合わせる利用方法が増えています。
2030年に255km、本当に間に合う?
ここは多くの人が気になるところでしょう。
現在営業中なのは約20kmの1号線だけで、残り約235km規模をわずか数年で整備するという目標は非常に大きなものです。
さらに各路線では、
- 用地取得
- 住民移転
- 資金調達
- 設計
- 建設会社の選定
- 車両・システム調達
- 安全認証
など多くの工程が必要です。
そのため、2030年という日付を保証された開業日として旅行計画に組み込むのは早すぎます。
255kmは「必ず完成する距離」ではなく、ホーチミン市が現在掲げる政策目標として見るべき数字です。
ただし以前とは条件が違う
一方、「1号線に時間がかかったから、次の路線も全部同じように遅れる」と決めつけることもできません。
ベトナム政府は都市鉄道整備を加速するため、ホーチミン市に特別な投資・調達制度を認めています。
さらに複数の路線を同時に進め、技術規格、車両、信号、保守などを共通化する方向も打ち出されています。
1号線で得た建設・運営の経験も、今後の路線へ活用できます。
つまり、過去の工期をそのまま次の8事業へ当てはめることも適切ではありません。
急ぐだけでなく安全と品質も重要
都市鉄道は、一度造れば数十年にわたって使い続けるインフラです。
2030年という目標だけを優先して、安全確認や品質管理が不十分になっては意味がありません。
ホーチミン市側も、路線間で技術規格を統一し、運行、保守、人材育成まで含めた一体的なネットワークとして整備する方針を示しています。
重要なのは「何km造ったか」だけではなく、開業後に安全かつ安定して使える交通網になるかどうかです。
旅行者にとって一番大きいのは空港アクセス
今後のメトロ整備で、旅行者に最も分かりやすい変化になりそうなのが空港への鉄道アクセスです。
現在はタンソンニャット空港から1区までGrabやタクシーを利用する旅行者が多く、道路渋滞によって所要時間が大きく変わります。
将来的に、
- タンソンニャット空港
- 市中心部
- トゥーティエム
- ロンタイン国際空港
が鉄道でつながれば、ホーチミン旅行の移動方法は大きく変わります。
メトロが「試しに乗る観光体験」から、「空港からホテルまで使う実用交通」になるかどうかが大きな転換点です。
【追加情報】2035年には約532kmを目標
ホーチミン市の計画は2030年で終わりではありません。
2026年8月に示された最新方針では、2030年までの優先8事業に続き、さらに7路線を整備する計画です。
目標は、
2030年
約255km
2035年
約532km
です。
実現すれば、旧ホーチミン市中心部だけでなく、旧ビンズオン地域などを含む巨大都市圏を鉄道で結ぶネットワークになります。
まとめ:2030年255kmは「完成確定」ではなく巨大な目標
ホーチミン市は、都市鉄道網を2030年までに約255kmへ拡大する目標を掲げています。
今回のポイント
現在営業中は1号線19.7km・14駅。
2026~2030年に8つの優先都市鉄道事業を推進。
2030年のネットワーク総延長目標は約255km。
2035年には約532kmを目指す。
タンソンニャット空港、ロンタイン空港への鉄道接続も計画。
ただし路線ごとの進捗は異なり、2030年完成はあくまで政策目標。
現在の1号線だけでは、旅行者にとってGrabの方が便利な場面もまだ多くあります。
しかし路線が増え、空港アクセスや乗り換え網が整えば、ホーチミン市の移動スタイルそのものが変わる可能性があります。
2030年に本当に255kmまで到達できるのか。今後数年間の工事進捗は、ホーチミン市の交通を考えるうえで非常に注目度の高いテーマになりそうです。
参考情報
- ホーチミン市人民評議会「TP.HCM xây dựng sơ đồ gantt làm 8 tuyến metro xong trước 2030」
- ホーチミン市人民評議会「TP.HCM sẽ phê duyệt hướng tuyến ba dự án metro trong tháng 8-2026」
- ホーチミン市報道センター「TP Hồ Chí Minh bổ sung 2 tuyến metro ưu tiên hoàn thành giai đoạn 2026-2030」
- ベトナム政府電子新聞「Chính thức vận hành metro số 1」
- ベトナム政府電子新聞「Vận hành thử nghiệm sân bay Long Thành từ tháng 9/2026」
- ホーチミン市報道センター「Metro số 1 tăng chuyến, chạy tới 23 giờ」
- JICA「Inauguration of Vietnam’s First Underground Urban Metro Line in Ho Chi Minh City」
この記事は、当YouTubeセカンドチャンネル動画をもとにしています。




